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大学数学で学ぶ分野の一つに、マクローリン展開と呼ばれるものがあります。
これはどんな分野?と思うでしょうが、微分積分学の一つです。
これを説明するのに数式を羅列し始めてもよいのですが、それでは現在学んでいる最中の人を別にして、これがどういうものか、勉強方法のポイントはどこなのかを知りたい人にとっては眠たくなってしまうだけでしょう。
そこで、少なくとも最初は数式を使わず、また後で使うとしてもできるだけ少なくして、マクローリン展開とは何なのか、何の役に立つのかを説明してみましょう。
関数の中には、その答えが簡単には求まりにくいタイプのものがあります。
一般の一次関数や二次関数などの場合は、xの値が決まればさして困難もなくyの値が決まるというのはすぐに分かるでしょう。
ところが三角関数や指数関数、対数関数の場合は必ずしもそうではありません。
xの値によってはさっとyの値が求まることももちろんありますが、そうでない場合も多々あります。
sin(π)は0だとすぐに分かりますが、ではsin(0.1)はどうかと言われると、すぐには答えが出てきません。
ところで世の中には、このようなケースで別に正確な答えまでは不要だから、近似値で構わないのでできるだけ簡単に答えが欲しいという場合があります。
マクローリン展開とはまさにこのような目的のために使われる微積分学の一分野だというのが、最も単純で特に数式も使わない説明のまとめ方ということになります。
ここから先は数式をある程度書くのを容赦頂きたいのですが、要は三角関数や指数関数などについて、その近似値を表すために別の数式、別の関数で表現し直すことだという言い方もできます。
一次式や二次式などであればxが決まれば簡単にyが求まるのですから、そういう式で近似することができれば目的が達成できることが見えてきます。
先に実例を挙げてみますと、例えばsin(x)はx/1!-x^3/3!+x^5/5!・・・と表すことができるというのがマクローリン展開です。
!の記号は、知っている人もいるでしょうが、階乗を表す記号で、その数字までの全ての自然数を掛け合わせた数を示します。
例えば5!は5×4×3×2×1で120です。
ここで、xの値が0に近い小さい数であれば、高次の項はさらに小さい数になり、足そうが引こうがほとんど無視してしまえるくらいの数になるということがすぐに分かるでしょう。
つまり近似値を求めるための式として使えるということを意味しています。
実際に計算してみてはどうでしょうか。
例えばsin(0.1)をこの近似式を使って求めてみましょう。
sin(0.1)は0.1/1-0.1^3/6+0.1^5/120・・・で表せることになり、これを計算してみると0.998334・・・くらいの値になります。
実際のsin(0.1)の値は0.99833417・・・くらいの値ですから、極めて精度の高い近似値が、たった3つの項の足し算引き算で求められていることが分かります。
これがこの数式の威力なのです。
実は、これはxの値が0に近い小さい数であることは必須ではありません。
xの値が1未満であれば、それの累乗はどんどん0に近い小さい数になっていきますからより早く近似値が求まるということは間違いないのですが、仮にxが1より大きくても発散してしまうようなことはないのです。
理由は、分母の階乗にあります。
階乗というのは、その答えが大きくなるスピードというか、大きくなっていく程度が累乗に比べて大きいからで、xが1より大きくても、極端なことを言えば100であろうが1000であろうが、それだけ後の項まで計算しさえすれば最終的には収束するので、近似値を求めることができるのです。
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