Short Story2(医学生編)

2018年02月26日

≪約束:大好きな叔父と叔母の死が医師を目指すきっかけに≫

 

 

 

「おじちゃん、ぼく、お医者さんになるよ。そうすれば、おばちゃんの病気、治してあげられるもんね」

 

僕は、自分が叔父にそう言ったのをはっきりと覚えていた。

その時、僕の夢は「医者」になり、そこからずっとその夢は変わっていない。

 

そう、叔母が亡くなってからも、僕の夢は変わらなかった。

 

叔父叔母夫妻が大好きだった僕は、しょっちゅう家に遊びに行っていた。

2人はとても仲が良かった。特に、叔父は叔母の事が大好きで、僕の両親も決して仲が悪いわけではなかったが、僕はおばちゃんは、おじちゃんに本当に愛されてるんだなぁと幼子心に羨ましくさえ思った。

 

そんな叔母が病に臥して、叔父はすっかり落ち込んでしまったのだ。

そんな塞ぎこんだ叔父に元気になってもらいたい一心で、僕は叔父に医者になる事を約束した。

 

叔母は、しかしそれから間もなくして天に旅立ってしまったのだが、僕はせめて叔父の希望でいられるように、医者になるという目標を捨てなかった。

 

運命というのは本当に時折とんでもないいたずらを仕掛ける。

僕が高校生の時、今度は叔父が、叔母と同じ病で倒れた。

 

ちょうど医学部の大学受験を控えていた僕は、叔父の命が、自分が医者になる前に終わりを迎えるのを知っていたが、「絶対に治してみせるから」と言い、励まし続けた。

 

叔父はそんな僕をじっと見つめ「お前は本当にお人好しで、良い子で、医者になって多くの人を救うのにはこれ以上にない人間だ。俺が死んでも、医学の道を歩み続けて、人の役に立ちなさい」と言った。

 

「もし、あいつと俺の病気が、医者を目指すきっかけになったのなら、それは俺たちにとっては嬉しいことだよ」とも。

 

悲しい出来事が起きても、人は、それを乗り越えなくてはならない。

僕は叔母と叔父の死を前に何もする事ができなかった。

それでも僕は医学部に入学し、がむしゃらに勉強し、脳外科医になるため院へ進学した。

 

学費を稼ぐためにアルバイトもしたが、両親の力添えがなければここまで来れなかった。

両親に感謝し、そして、きっかけを与えてくれた叔父叔母にも感謝し、常に自分は人に生かされているという事を忘れないよう心がけ、謙虚に学び続けている。

 

翌年国家試験を控えている僕は、叔父との約束を胸に、人の役にたつために、多くの人を救うために、今日も分厚い研究所と学術書と向き合っている。